新人監督にしか出来ないギラギラした瞬間

もう一つ、もしこの作品を駿監督が作っていたら、決してこの表現は出来なかったろうと思うシーンが後半のクライマックスにあります。(以下ネタバレ)
「今のそなたにはその剣は抜けまい。」
ゲドがアレンの持つ「魔法で鍛えた剣」を指してそう言いますが、とうとう、最後の重要なシーンで、アレンはこの剣を抜き放つ事が出来ます。一般的に「剣は最後には抜ける」のがお約束で、私とて頭では「抜ける」と判っているのですが、このシーンが全編を通して非常に秀逸でした。
というのも、中盤これと言った「トリック・スター」が無いまま、真面目に話が進行して行くので、やや集中力が切れる傾向がありました。
いつまでも、主役のアレンは不安定だし、一体このままで「大丈夫だろうか」と観ている側が不安になる程、「自覚」の時が遅れました。その「ギリギリまで引っ張った」結果が、この剣を抜き放つ部分で、意外な効果を生みます。
「本当に抜けるだろうか」とハラハラするのです。
堅く緩まない鯉口(西洋の刀でもこう言っていいのかしら?)グッと力を入れて一瞬遅れて抜き放たれた剣に、自分でも意外に感動してしまいました。
これは、吾郎監督の気迫が乗り移ったシーンで、「抜けない剣が抜けた」という古典的モチーフを我が物として表現していました。恐らく、新人であるが故のヒリヒリとした緊張感が生み出した至極の一滴とも言える絵で、7歳の娘も私も涙してしまいました。

まだまだ、語りたい事は多いのですが、それは「その2」でという事で。。。