「崖の上のポニョ」鑑賞!

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崖の上のポニョ サウンドトラック
 本日、公開初日初回を家族で観てきました。開館前から長蛇の列で「さすがジブリ!」と思ったら、大半が同日ロードショーの「ポケモン」目当ての家族連れでした(やはり、恐るべしポケモン!)「ポケモンもやってるねぇ。」何て言おうものなら、5歳の長男が「ポニョよりポケモン!」と言い出すのは目に見えていたので、黙って劇場へ直行!でも、100分以上の間、食い入る様にポニョに見入っていました。(9歳の長女も同様)いやぁ〜、さすがジブリ宮崎監督。気持ちの良い映画を見せて頂きました。(でも、ハウルの時も感じたんだけど「これまでの集大成」という空気が感じられて、何だか寂しくなっちゃいました。)さて以降、ネタバレですので未鑑賞の方はご注意下さい。簡単に感想を。。。


■手描き恐るべし!
 ジブリ美術館を何度か訪れた方は判るかも知れないが、ここ数年宮崎監督が実験的に作って来た短編で実証されたいい部分が全て凝縮された映画だった。手描きの迫力、波に人格があるかのような動きは、一度見たら忘れられない「やどさがし」から生まれた技法だし、「みずぐももんもん」で培った水泡や、「コロの大さんぽ」で試みられた手描きのテクスチャが残る背景美術はとっても美しかった。ただ、それを観ているだけでも幸せな気分になれる。大好きな絵本作家「林明子」さんの絵本が、動いているかのようだ。


■走る走る!
 本当に宮崎監督は「疾走」させたらだれも叶わない。実際には、作画監督さんが上手なんだろうが、「コナン」の頃から持っている「思いっきり嘘だと判っているのに『ああ、きっと走れるんだな』と思わせる技量」はたいしたもんだ。「水の上を走る」と言えば、ピクサー社の「Mr.インクレディブル」の息子(ダッシュ)で有名だが、彼の「モーターボート走り」とはまた違う、いかにも日本らしい「くのいち水練の術」とでも言いたくなるような、裸足で水面をバタバタ走る姿は本当に可笑しかった。(子ども達は大爆笑)


■シンプルなストーリーだが謎も多い
 今回は登場人物を少なく、5歳の子でも判るストーリーにしたかった、、と監督はインタビューで答えていたが、確かに話しはとっても簡単だった。。。が。。。やはり、いくつか疑問が残る。最大の謎は「手漕ぎ船に乗った若夫婦と赤ちゃん」の存在。鈴木プロデューサーの裏話から、この船に乗った家族は宮崎監督にとって重要な位置づけらしいのだが、今ひとつ、彼らとポニョの絡みが判らなかった。何故、ポニョは赤ちゃんをしげしてと眺めたんだろう?何を考えていたんだろう?ずっと赤ちゃんはしかめっ面で、ポニョが別れを告げた後、身をよじらせてグズリ始める。ポニョが飛んで戻って赤ちゃんにキスすると、初めて赤ちゃんは笑顔を見せた。
 きっと、重要な意味合いがあるのだろうが、私には「若い家族でとっても頼りなさそうなお父さんが手漕ぎの櫓(ろ)一つでこれから人生という航海に旅出る姿を描きたかったのかなぁ。」とか「外から見ると、とっても心もとない様子の船だけど、中には小さな小さな幸せが詰まってる。」って表現したかったのかなぁ、、程度しか判らなかった。(本当にポニョは何を考えていたんだろう)


■誰もが宗介を息子にしたい!
 主人公の宗介は本当に可愛かった!そして、男の子を持つ母親ならば誰でも思い当たるであろう「男の子特有の健気さ」があって、冒頭私は涙してしまった。隣で座って観ている5歳の息子にあまりに重なる所が多かったからだ(もちろん、あんなにいい子じゃないけど)。でも、実は実際の男の子を知ってるが故に「かなり理想を押し付けてるなぁ。」という親の事情(この場合は船長の耕一と母のリサ)も透けて見えたりして、(パパママでは無く、ファーストネームで自分達を呼ばせている所も意味深)なかなかに感慨深かった。誰もが「この家族は宮崎監督そのままだ。」と思うだろうが(船の名前が「小金井丸」とまで言い切る所が凄い、ジブリの所在地は東小金井)宗介は息子である吾郎さんかも知れないし、或は幼き日の駿監督自身なのかも知れないと思う。「男は約束を守る。」監督は格好よく言い切りたかったのに、結局は、ごめん、ごめんと謝りながら何時帰るとも知れない航海に出っぱなしだった過去を思っているのだろう。


■母が元気な映画だった
 とにかく、「父親」と名のつく者たちは、映画の隅っこの方でこちょこちょいじいじと立ち回るばかりで(フジモト然り、耕一然り)大切な部分は、母親達が取り仕切る物語だった。(監督も「母と子へ」とはっきり名打っている)エンディング近く、ポニョと宗介の将来を決める大事な会談は、リサとグランマンマーレが取り決めてしまうのが何とも「母系社会」だなぁと思うし、そうみると「ポニョは嫁なんだなぁ。」と思えて可笑しかった。「半分お魚なのですがそれでも構いませんか?」と宗介に確認する下りは、「ああ、そうか嫁ってそれ位に『異質』に思うものなのかなぁ。」と深読みしたくなってしまった。となると、前段で述べた「ポニョは出会った赤ちゃんに何を思っていたのか?」という謎が、何となく判った気がする。


■素敵な保育園の描写
 ストーリーの中ではほんの少ししか出ないが、宗介の通う保育園の描写が本当に良かった。我が家も子ども達は3人全て保育園へ通わせているが、きちんと「保育園」として描けていた。しかも「保育園の玄関先」という舞台設定はなかなか素人では出来ない。、昔はあった「心強い保育園」としての演出が見事で「あんな保育園今もあったらどんなにいいにな。」と涙しそうだった。どこがと言うと、、冒頭の朝のシーン。宗介が玄関先でもじもじしているバックに「少しお熱があるみたいだけど、元気そうだし大丈夫でしょう。」と0歳児とおぼしき赤ちゃんを預かってくれるベテラン保育士さんの会話が流れる!この一言、今、赤ちゃんを預けて働いているお母さんなら垂涎もの、「羨ましい、いいなぁ。」の連発だ。イマドキ、こんな風に事情と状況を察してサポートしてくれる保育園は皆無だ。正しくは、ちょっとのお熱でも「集団生活ですし、万一の事があってはいけませんのでお預かり出来ません。保育園は基本的に元気なお子さんの来る所です。」と答えるのが、今日ただいまの模範解答だ。みんな、責任はとりたくないし、万一いや、億に一つの事態にビビって、親も園も過敏で神経質になっている。「神経症の世の中へ」と監督はメッセージを寄せているが、このちょっとした保育園の描写でも「昔はこれくらいに、いい意味でのいい加減さがあったんだなぁ。」と感じた。(瀬戸内の海辺の保育園も素敵だしね)

 今日の所の感想はこの辺で。